少額減価償却資産の取り扱いについて


はじめに

 平成10年度法人税改正により、取得価額が20万円未満の減価償却資産の取り扱いが変わりました。(平成10年4月以降に開始する事業年度より)
 いままでは、取得価額が20万円未満の場合は、全額損金算入(消耗品費などで経費処理)が認められていましたが、今後は
10万円未満でないと、全額損金算入はできない事となりました。
 また、20万円未満の減価償却資産については、
一括償却資産として3年間にわたり均分に損金算入するという選択肢も増えました。これをまとめると、以下のようになります。

≪改正前≫

取得価額

処理方法(いずれかを選択可能)

20万円未満 ○全額損金算入
○固定資産に計上し、通常の減価償却を行う
20万円以上 ○固定資産に計上し、通常の減価償却を行う

≪改正後≫

取得価額

処理方法(いずれかを選択可能)

10万円未満 ○全額損金算入
○固定資産に計上し、通常の減価償却を行う
○一括償却資産に計上し、3年間で均等額を損金算入
10万円以上20万円未満 ○固定資産に計上し、通常の減価償却を行う
○一括償却資産に計上し、3年間で均等額を損金算入
20万円以上 ○固定資産に計上し、通常の減価償却を行う

ballorange.gif (239 バイト)一括償却の方法

 さて、「一括償却資産」の損金算入の方法ですが、「
3年間で均分に損金算入」とは、どういうことか?という疑問があります。
 通常の減価償却と同様に考えてはいけません。減価償却においては、期中供用の場合は事業供用日から期末までの月割計算を行う事とされていますが、一括償却資産においては、
月割計算は行いません。つまり、事業年度のいつ供用されたものでも、毎年3分の1ずつ、損金算入して行くのです。

≪減価償却と一括償却の計算方法の違い≫

  例) 取得価額が15万円の備品を平成10年10月に購入、事業供用した。
     この備品の耐用年数は3年(定額法)、当社は3月決算の一年決算法人である。

減価償却の場合 一括償却の場合
減価償却費=15万×0.9 ÷ 3 × 6÷12
       =22,500円        ↑
                   月割計算を行う
損金算入額=15万÷3
        =50,000円
  (月割計算は行わず、単に3で割るのみ

ballred.gif (1956 バイト)どっちがいいのでしょう?

 10万円以上20万円未満の減価償却資産については、すでに説明した通り、「固定資産に計上して通常の減価償却を行う」方法と、「一括償却資産に計上して3年間均分に損金算入する」方法のいずれかを選択する事ができるわけですが、どちらを選択するかが問題です。
 どちらを選択するかは、その資産単位で決定する事ができますので、この資産は固定資産、この資産は一括償却資産・・・というように、振り分ける事ができます。
 たとえば、耐用年数が3年の減価償却資産で、定率法を採用していたりすると、事業供用事業年度の減価償却額は、一括償却する場合より多くなったりしますので、節税効果があったりします。ただし、固定資産に計上するとその資産を個別管理しなければならないとか、固定資産税の課税対象になったりとか、デメリットもありますので、総合的な判断によって、決定するのが良いでしょう。
 以下に、固定資産と一括償却資産の比較を記載しますので、参考にどうぞ。

固定資産 一括償却資産
損金算入額 耐用年数が短い場合、初年度において一括償却より通常の減価償却をした方が有利になる場合がある。 耐用年数が長いものや、事業年度後半に事業供用したものでも、3分の1損金算入できる。
資産管理 固定資産台帳に記入するなど、個別管理を行う必要がある。 事業年度ごとの合計金額を把握しておくだけで良い。
固定資産税 固定資産税の課税対象となる 固定資産税の課税対象とならない
除却の場合 未償却残高の除却損を計上する事ができる 個別管理していないので、未償却残高を把握する事ができないため、除却損は計上できない
売却の場合 未償却残高を譲渡原価として計上できる 個別管理していないので、未償却残高を把握する事ができないため、譲渡原価は計上できない


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